Hildegard-Relaxing Herbal Tea
今夜は『Hildegard-Relaxing Herbal Tea』
昨晩は本を朝方まで読みふけっていたせいで、盛大に寝坊して、生まれて初めてバイトに遅刻した。
少し前まで、本なんて滅多に読まなかったのにあっという間に昔の自分を取り戻せたような気分。
夢中で本を読んで、ページをめくる手が止められなくて、本の世界で生きているくらいに物語が好き。
そんな自分が失われていくようで、ここ数年は寂しかった。
この一年、考えて、考えて、考えて。
ひたすら自分を見つめなおして。
結局辿り着いた答えは、単純なことだった。
わたしは物語が好き。言葉が好き。
書くことが好き。
結局、ここに戻ってくるんだ。
昔から、あんたはおかしいって変わってるってママに言われていた。ママはそれをいい意味で言っていたから、わたしはそれに応えようとした。
中学生くらいから、ママや弟の笑ってもらえるのが嬉しくて、おかしなことばかりした。
次第にわたしはそういういう自分が自分だと思うようになった。
家族から離れて暮らすようになった。
ひとりきりの生活は、誰にも求められず期待されず失望されない。
楽だった。
家族の前だけじゃない。
わたしは誰かといるといつも違う。
気弱な子といるときは、その子を引っ張る役を。上に立ちたい人といるときは、その人を頼る役を。
真面目で頼れる役も、愛嬌を振りまく役も、何もできない馬鹿の役も。
わたしは特に意識もせず、相手や場所によって演じる役をころころ変えていた。
無意識に誰かの求める自分を演じていた。
だから、わからなくなった。
「あなたはどんな人間ですか?」
そう聞かれるとわからなかった。
本当の自分なんて、わからなかった。
ひとりきりの世界は気楽だった。
誰にも求められない世界。
退屈で、寂しくて、孤独で、虚しかった。
ひとりでいる時間が多くなって、自分と向き合う時間が増えた。
何も演じないからっぽの自分。
誰にも求められない自分。
家族には、変わった子って思われていたけど、それでは社会に適合しないから、普通になろうと思った。
普通の女の子みたいにしようと思った。
わたしは自分に当て書きをして、それを演じた。
でも、出来上がったのは普通にもなりきれない、特別変わっているわけでもない、中途半端なつまらない人間。
わたしは自分に失望した。
こんなつまらない人間がわたしなのかと。
友達がたくさんいて、いつも明るくて、馬鹿で、変な子。それが家族の中のわたしだった。
でも本当のわたしは、本当は他人に興味がなくてひとりが気楽なつまらない人間。
どうしたらいいか、わからなかった。
恋人ができた。
わたしはその人にもっと好きになってほしくて、いろんな自分を演じた。
でも、空回りしてばかりだった。
その人はわたしに何も求めていなかった。
それどころか、時々うっかり素の自分に戻ってしまったときのほうが一緒にいて楽しそうに見えた。
だからわたしは、彼の前で演じることをやめようとした。
これは本当に難しくて、誰かの求める自分を演じるほうがよっぽど楽だった。演じることをやめるということは、今まで頑なに閉ざしていた心を他人に見せるということで。
弱いわたしには難しかった。
それでも、わたしは徐々に演じることをやめて、ただのわたしでいるようになった。
彼はわたしにいろんな感情をくれた。
彼のくれた感情はあまりに激しくて大きかったから、わたしはずっと抑えてた感情の箍を外して、表情筋が痛くなるくらい思いっきり笑ったり、目が腫れすぎて開かなくなるくらい泣いたり、声が枯れるくらいに怒ったりした。
つまらないだけのわたしは、たくさんの感情をもらって自分を見つけた。
それから、少しずつ自分を見つめ直して、どんな自分でいても変わらないことを見つけた。
物語が好きなのも、そのひとつ。
わたしはずっと物語が好き。
書くことが好き。
色々遠回りしたけど、やっと少し見えてきた。
そんな気がした。